資生堂パーラーの料理作りの哲学と伝統のメニュー構成についてお聞きしたいと思います。 |
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澤口 |
私が入社した時に感じたのが資生堂パーラーの料理は「万人に愛される味」だということです。西洋料理の王道といいましょうか、「ミートクロケット」に象徴されるようにシンプルでガロニも付けず、本当のコロッケの美味しさを味わっていただく料理なのです。「昔と変らない味」という評価をいただきますが、実際には食材も昔とは変化していて、野菜類の甘味や酸味も違いますし。肉類も時期的に同じ物が手に入りづらい時もあるのでその辺は気を使いますね。グランドメニューの構成は昔からのオーソドックスなメニューを大切に考えています。コースメニューの中には「ロオジエ」のジャック・ボリー前総料理長のエッセンスも入れていますが、「資生堂パーラーのコロッケが食べたい」「チキンライスが食べたい」というのが来店される多くのお客様の要望だと思います。 |
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洋食の基本はベシャメルソースやデミグラスだと思いますが、基本ベースの大切さについてどうお考えでしょうか。 |
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澤口 |
注目されているフランス料理人達は殆どベシャメルソースやエスパニョールソース等は使っていません。しかし日本人の主食は「ご飯」ですから、ベシャメルソースやデミグラスソースは日本人の嗜好からすると「ご飯」にマッチするソースベースといえます。資生堂パーラーではそれらをすべて手作りでストックしていますが、調理スタッフもただ分量だけ理解していればいいのではなく、ルーを作るポイントやつめ方等が非常に大切です。今の若い調理スタッフ達は最新の情報はたくさん持っていますが、けしてレシピだけでは作れないし、反復して仕上げる経験はなにより大切なのです。 |
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資生堂パーラーで働く若い調理人達はそうした伝統とか基本の大切さという部分を理解していると感じますか。 |
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澤口 |
概ね入社してくる時点で彼らは理解しているようです。日本の洋食は元々フランス料理から派生したものですが、資生堂パーラーに入社してくる人達は、昔からの伝統と味を受け継ぎたいと思って入ってきますから、その部分にギャップは生じてないと感じています。カレーにしても当店では「ルー」から作りますし、「何で今さら!」と思っている人はやっていけませんね。但し、お客様の舌の感覚も進化しているので、ただ昔と同じレシピでは「美味しい」と感じていただけない部分が有ります。ですから伝統を継承しながらも今の時代の「美味しい」を追及していく必要があるのです。 |
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本日は大変貴重なお話をありがとうございました。これからもますますのご活躍を楽しみにしております。 |
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