1988年イタリアへ渡り、フィレンツェのホテルや「ダル・ペスカトーレ」で修業を積む。89年に帰国し、東京・乃木坂の「リストランテ山崎」に入店。93年よりシェフを務める。2001年オーナーシェフとして「リストランテ濱ア」をオープンし、現在に至る。 |
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濱ア氏の言葉 |
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1.信頼できるスタッフがいるから店が経営できる
2.品質重視の仕入れで生産者から大事にされ、良い食材が手に入る
3.お客さまの口に入るものに最後まで責任を持つ |
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―濱アシェフの料理哲学とは? |
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濱ア |
料理づくりは、まず人ありきですね。私1人では料理は作れませんし、人間関係がうまくいっていなければ安心して任せることができません。現在、キッチンに6名、ホールに5名のスタッフがいますが、私が以前勤めていたリストランテ山崎時代から10年以上一緒に働いている人もいます。また、生産者さんや業者さんとの信頼関係が築かれていないと、良い食材は仕入れられないと考えています。高いものには高いなりの理由があると思うので、仕入れる品は価格ではなく、品質重視で決めます。肉は何月何日に生まれてえさは何を食べているかまで分かっているもの、野菜は生産者の方に生育状況を聞きながら分からないことがあれば尋ねたりして、いずれも私の求める食材を作ってくれる生産者さんとのつながりを大事にしたいと思っています。 |
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―イタリア料理の魅力とは何だとお考えですか? |
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濱ア |
地域色が豊かなことではないでしょうか。私は鹿児島県出身なので甘辛い味つけがおふくろの味として身についています。その影響もあるのか、塩でなく、だしを引いて味をつけることが多いですね。今日作った定番のウズラの料理のように、タレを染み込ませて焼いて最後に塩を振るとか。お客さまからは「コース内容を聞いてボリューム感があると思ったけれど、意外と全部食べられた」という声をよく聞きます。
イタリアではロンバルディア州で修業した「ダル・ペスカトーレ」の家族的な雰囲気に影響を受けました。当店でも夜は妻が店を手伝ってくれますし、子どももよく店に来ます。理想は、お客さまがリラックスして食事をして「楽しかった」と言っていただけること、次の日の朝ごはんがおいしく食べられる料理を作ることですね。 |
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―スタッフに伝えている、料理人として大事な心掛けとは。 |
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濱ア |
「料理をする前には手を洗いましょう」。これは料理人として当然の心構えで、一番大切なことなので徹底しています。料理人は、人の口に入るものを作っている、という自覚と責任感を常に持っていないと、おいしい料理を作れるだけではだめだと思います。衛生観念については、あいさつのように毎日言わないと身体に染み込まないので、スタッフには口を酸っぱくして言っています。その基本ができてから初めて食材や調理法について考えることができ、店の個性が出せるのだと思います。衛生を追求していくと、水や設備、調理の腕もそれなりのものが必要になってきます。汚い厨房や、油ぎった窓ガラスもお客さまや業者さんが見たら幻滅です。清潔にしていれば、良質な食材も集まるでしょうし、おいしい料理も作れるようになるはずです。
私も若い頃は新しいレシピばかりを追求し、奇をてらった料理を作ったこともありましたが、年を重ねるにつれてそれでは本末転倒だと気づき、料理の本質を見つめるようになったのです。 |
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―濱アシェフの今後の抱負をお聞かせください。 |
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濱ア |
経験を積むほどに自分の可能性の幅は広がりますが、人材、料理、お客さまの満足度など考えることが多くなり、楽になるどころか、苦しくなることもあります。しかし、私にとってイタリア料理は、「ほっとできる料理」であることに変わりはありませんから、基本に戻りつつ、少しずつ前進できればいいと思っています。 |
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―本日はありがとうございました。 |
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